耳に残る違和感、それがすべての始まり──。
『ブラックボックス』は、航空機事故の謎を“音声データ”から追いかけるフランス産サスペンス。
舞台は墜落事故を調査する「音声分析官」。派手な爆破もカーチェイスはないけど、
わずかな沈黙や息遣い、微細なノイズが手がかりになって次第に謎や黒幕がわかっていく様はサスペンス好きには刺さると思う!
理詰めなのにハラハラ。この人もあの人も怪しいのでは…?でも動機は?実際にどういう事?
そんな謎がたくさん詰まった1本です。
RE:VIEWの読み方
💡このブログでは基本的にネタバレを含む感想を書いています。
まだ作品をご覧になっていない方や、ネタバレを避けたい方は、記事冒頭の作品紹介やあらすじ、そしてIMDbやFilmarksの評価スコア、および私の10段階レビューを参考にしてくださいね。
🟡ネタバレOKな方や、すでに作品をご覧になった方は、ぜひ感想パートへどうぞ!
あらすじ
新型旅客機の墜落事故が発生。
音声分析官マチュー(ピエール・ニネ)は、コックピットの音声が記録された「ブラックボックス(CVR)」の解析を任される。
ところが、解析された音声には不可解な点が多く、上層部の“テロ説”と一致しない。
マチューの耳には、ノイズの奥にある違和感がずっと残り続けていた。
その違和感を信じて調査を進めるうち、事故の背後には技術者、メーカー、政府、規制機関…
あらゆる立場の“圧力”と“隠蔽”が渦巻いていることが徐々に明らかに。
やがてマチューは、キャリアも私生活も失いかけながら、真実の音にたどりつこうとする──。

作品情報&キャスト
作品情報
■作品情報
項目 | 内容 |
---|---|
原題 | Boîte Noire |
製作国 | フランス |
公開年 | 2021年 |
上映時間 | 130分 |
ジャンル | サスペンス/スリラー/社会派ミステリー |
映倫区分 | G |
IMDbスコア | 7.2 |
Filmarksスコア | 3.8 |
キャスト・スタッフ
役名・担当 | 名前 |
---|---|
主人公(音声分析官) | ピエール・ニネ(Pierre Niney) |
妻/同僚 | ルー・ド・ラージュ(Lou de Laâge) |
上司 | アンドレ・デュソリエ(André Dussollier) |
監督 | ヤン・ゴズラン(Yann Gozlan) |
脚本 | ヤン・ゴズラン(Yann Gozlan)ほか |

ピエール・ニネは映画『イヴ・サンローラン』のサンローラン役でも有名だよ
感想(ネタバレ感想)
妄想なのか真実なのか?
そこまで派手な演出やアクションがあるわけじゃないのに、見てる間ずっと緊張感が途切れない映画だった。
黒幕は誰なのか?主人公のマチューの妄想なのか?真相は何か?をずっと考えていた。
静かに進むサスペンスの中で、「人間と技術」の境界がじわじわ侵食されていく感覚があった。
飛行機事故の原因解明になるブラックボックスを巡るサスペンス映画だね。
音声=真実じゃない、って怖すぎ
一番ゾッとしたのは、「アラーは偉大なり!」の音声が捏造だったってとこ。あれって「テロっぽく見せるための偽装」だったわけ!
つまり、「ブラックボックスに入ってる音声は真実だ」っていう前提なのに…
悪意がある専門家(この場合は音声分析官)に簡単に壊される世界だったってこと。
この事実が明らかになったとき、音じゃなくて“倫理”が信じられるかどうかの話なんだって怖くなったね…。
技術の進歩が悪いんじゃない。
でも、技術を使う人間が「何を守ろうとしてるか」で、最悪の結末も引き起こされる可能性があるんだよね。
技術の暴走は人を殺す
この映画は結局、テロじゃなくてシステムの欠陥で起きた事故なんだよね。
でも、その欠陥を隠そうとしたのは企業側で、音声データは改ざんされ、分析官であるマチューも黙らされそうになる。
「命を守るはずの技術が、企業の利益で捻じ曲げられていく」この構図がめちゃくちゃ怖い。実際そういうケースあり得そうじゃない?(突然の陰謀論w)
なんていうかこういう事件って静かに、誰にも気づかれずに進んでいくものなんだよね。
でも、同僚のポロックが行方不明なのに偉い人達が積極的に探そうとせず、マチューにすぐ任せちゃうのはどうなんだろうなぁ。普通人1人いなくなって連絡取れないならもう少し大事になると思うんだけどね。
ドローンが伏線の鍵、甥っ子GJ
主人公マチューの甥っ子が飛ばしてたドローン、
あれが急に制御不能になるシーンがあるんだけど…
結構強引にお姉さんと甥っ子登場したから、そのとき「あ、これ何かある」って思ったら、
まさかの飛行機事故と同じ構造だったとは😱
ちょっとした“違和感”が、後々とんでもない真相につながるっていうこの構成はなかなか上手い。
小さなきっかけから、大きな闇に触れてしまう感じは鉄板だけど上手く場面転換したね。

でももうちょっとお姉さんと甥っ子を事前に出しておくといきなり感は少なかったと思うんだけどね!
真実は暴かれる。でも、正義は死ぬ。
この映画、ちゃんと最後に真相は明かされるの。
改ざんもバレて、映像も流れて、世間にも知れ渡る。
だけど…主人公は命を落とすし、企業の偉い人たちは反省しない。
「正義は勝つ」じゃなくて、「正義は犠牲になる」物語だった。
私はこういうメリーバッドエンドやバッドエンドは好みなので、この映画のラストは嫌いじゃないけどハッピーエンド好きな人はちょっとがっかりポイントかもね。
技術は便利。でも、ちゃんと怖がらないと
ちょっと個人的な話だけど、母が新車を買うって話をしてて、
「衝突回避システム付きで安心ですよ〜」って営業さんに言われたんだけど、
うちの母、そういう機能の仕組みまではわかってないのよね。
シニア世代って、便利なものを“信じすぎる”危うさがあると思う。
この映画みたいに、
「人間が介入できない仕組み」って、便利に見えてもめっちゃ危険。
人の命が関わる場面では、“強制解除”って絶対必要な機能だよね。
まとめ:この映画、技術を信じすぎてる時代への警鐘かも
『ブラックボックス』は、割と静かに進む映画だったけど、
ずっと「これ、現実でも起きそう…」って思いながら見てた。
実際、航空機無線関連のハッキング事例はいくつかあるんだよね。だから映画の内容は誇張もあるけど決して起こりえないわけでもないんだよね。
便利な技術はどんどん増えてるけど、
「それを扱う人間はどうなの?」って問いかけてくる作品だったかな。
倫理とか責任とか、
私たちが置き去りにしてきたものが、じわじわと浮かび上がってくる。
技術って、ちゃんと使えば助けになるけど、
信じすぎたら命を奪うこともある。
そういう怖さを、「音」と言う媒体を通してサスペンスにした映画だったね。